世界の恋愛事情01:ムスリムの恋愛と結婚 in マレーシア

クアラルンプールのショッピングモールでショッピングデート中のムスリムカップル

モハメッド、34歳

クアラルンプール出身のモハメッドは、イスラム教を信仰するムスリムだ。ただ、モハメッドはイスラム教では禁止されているアルコールも飲むし、イスラム教徒の日課である毎日5回のお祈りを欠かさず行うことはしない。イスラム教ではご法度とされている豚肉さえも食べることを厭わないけれど、豚肉だけは「味が口に合わない」と言って好んで食べることはない。

とはいえ、とにかくカジュアルなムスリムであることに変わりない。普段の生活で接している限り、彼がイスラム教を信仰していることに気がつく日本人は少ないだろう。

ただし一見宗教とは無関係のように見える彼も、ことが恋愛・結婚となると話は別だ。34歳になった今、次の真剣な恋愛相手とは自然と結婚を意識する歳に差し掛かっているという。彼の文化では、34歳で未婚というのは晩婚の類に入るそうだ。

過去に経験した、実らなかった異教徒との恋愛

モハメッドはかつて異教徒との真剣な恋愛も経験している。ムスリムはムスリム同士で恋愛・結婚するのが「一般的」とされている中、彼は親に異教徒との交際を告白し、認めてもらうように説得するなど、出来得る限りの手を尽くして当時の恋愛と真剣に向き合ってきた。

ところがその異教徒の彼女との恋愛はうまくいかなかった。やっぱり異教徒同士では一緒になれないという理由が一番なものの、それだけではない普通の男女の恋愛感情のもつれも影響している。要は、彼女の方が冷めたのだ。「あなたはムスリムだから先が見えない」それを理由に別れを切り出した彼女は、モハメッドと別れた後、2カ月もしないうちにあっさり別のムスリムの彼との交際をスタートさせた。モハメッドが彼女の言葉と裏腹なその行動にひどく胸を痛めたのは言うまでもない。

そしてモハメッドが異教徒の彼女との別れを親に報告した時、「ほれ見たことか」とあたかも最初からその展開を想像できていたかのような冷たい反応が返ってきた。「ムスリムはムスリムを相手に選ぶべき」この概念がモハメッドの親の頭の中から消えることはなかったのだ。そしてそんな親の冷たい態度にも彼は心を痛めた。

将来の妻は、実の兄の妻の妹?

そんな辛い結末を迎えた恋愛から約2年。モハメッドは34歳になった。先にも触れた通り、彼の文化で34歳で未婚の場合「少し行き遅れている」と見なされる歳だ。そしてそんな晩婚の途を辿る息子を見かねた両親が、とうとうその腰を上げて行動を開始した。ムスリムの世界では、親が子どもに結婚相手を紹介するということもそう珍しいことではない。

彼の両親が将来の妻候補としてモハメッドに紹介したのは、モハメッドの兄の妻の妹。つまりは、義理の妹だ。日本で義理の姉妹兄弟の姉妹兄弟と結婚するというのは、あまり聞く話じゃない。むしろ「ちょっと異例なこと」と見なされる風潮さえあるだろう。そんな日本では少し眉を潜めそうないわゆる「親に仕組まれたお見合い」も、モハメッドは素直に受け入れる。過去に親に歓迎されずにうまくいかなかった異教徒との恋愛の件もあり、万事スムーズに進めるためにも、今回は親の指示に従うのが最良の選択というのも一つの理由だ。

彼は親から彼女の連絡先を受け取り、外国に住む義理の妹とまずはメールで会話を始めるという。それから少しずつお互いを知り合い、結婚に向けての関係性を築いていくのだそうだ。親同士が決めた相手なのだから、本人同士にものすごく違和感がなければ、結婚までもスムーズに進むのだろう。

親の指示通り恋愛するのは、ムスリムにとって自然な選択

ムスリムの恋愛は日本人にとっては少し特殊な部分が多いかもしれない。自分の兄弟姉妹が結婚した相手の兄弟姉妹との結婚も、彼らにとってはごくごく普通の恋愛になる。あるいは、俗にいう恋愛という感情とはまた違うのものなのかもしれない。親を喜ばすため、家族が穏和な空気に包まれるために、親が選んだ相手と一緒になるというのも、一つの自然な選択。

モハメッドと彼女が結婚に踏み切るのも、そう遠くない未来のことかもしれない。

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