連日行列!沖縄北部・前田食堂の沖縄そば&隠れ必食メニュー!芸能人もお忍びで訪れる名店
人口3,500人ほど、80歳以上の淑女と紳士が現役で活躍している沖縄県北部に位置する、大宜味村。プロゴルファー宮里愛ちゃんの出身地である「東村」の隣村で、豊かな自然と、「長寿の村」と呼ばれている程パワフルな高齢者が魅力の村だ。
沖縄県民でも「行ったことがない」と答える人が多いような大宜味村だが、村には連日長蛇の列を作る食堂がある。それが、今にも潰れそうなところが“ウリ”の一つの「前田食堂」だ。
11時に開店するなり、すぐ満員。ランチタイムのピーク時にはすぐに入れず、順番が回ってくるまで待つことも今では当たり前の大繁盛店となっている。
私が小学生の頃(今から20年前くらい!)は、こんなに行列ができる食堂ではなかった。ものすごく人気というわけでもなかったが、村民には浸透しており、リピーターもほとんど村民という“村民ユーザー”がメインの食堂だった。
そんなこじんまりとしていた前田食堂が、なぜ全国区(もしかするとアジア区まで)になったのか。その理由がこちら。
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前田食堂のミリオンセラーと言えば「牛そば」!
前田食堂を訪れる人のほとんどが、この「牛そば」をお目当てにやってきている。ネットに投稿された口コミをきっかけに急速に知名度があがり、今や芸能人もお忍びで訪れるなど、一気に全国区まで駆け上がった。
「牛そば」のユニークな点といえば「こんもり牛肉もやし炒め」と「黒こしょう」である。日本昔話のご飯のようにどんぶり上にこんもり盛られた牛肉もやし炒めはかなりボリューミーで、そう簡単にそばには辿りつけない。
そしてようやくそばにありつけたと思ったら、今度は驚くほどのブラックペッパー軍団に遭遇する。でもこの黒こしょうが癖になる辛さで、刺激的で箸が止まらないのである。
確かにこんな沖縄そばは沖縄中探しても見たことがない。そして味もおいしい。人気な理由は明らかだ。この「牛そば」を求めて、前田食堂には連日人が切れることなく訪れる。
急な「牛そばショック」にとまどう村民
この牛そばが流行りだしたからなのか、世の中の景気のせいなのか、前田食堂はこの十数年間で少しずつメニューにアレンジを加えてきた。
30円、50円と少しずつメニューの価格も上がり、一時期村民は(少なくとも私の家族は)足が遠のいた。中でもショックだった出来事は、定食メニューに入っていてこの世で愛してやまない食べ物のひとつ、目玉焼きが明らかにSSサイズになっていたことだ。
その小ぶりな目玉焼きを目にした瞬間「ここまできたか…」と、牛そばショックの脅威を感じたのである。特に卵好きの私と父にとっては衝撃的に大ショックな事件であった。
それでも加速していく牛そばバブル
そんな私と父のショックなんてどこ吹く風。前田食堂の牛そばバブルはどんどん加速していき、村民が利用しなくても連日観光客であふれるようになった。村民からすると、それはちょっと「異様」なその光景で、さらに「村民(少なくとも私の家族)の前田離れ」が進んだ。
何というか、本当に勝手な言い分だが、あの汚い名店「前田食堂」には、ずっとひっそりと隠れた名店でいてほしかったのである。まだ13そこらで若かった私は、なんだか観光客に「取られた」感を勝手に感じて勝手にすねていたのかもしれない。
そうして前田食堂との溝が深まったままいつの間にか年月は過ぎ、私も今では32歳になった。
村民(島袋家、主に私)、前田食堂愛、再燃!
牛そばショック以降、なかなか足を運ぶことがなかった前田食堂だったけれども、この秋ゆっくり帰省していたときにどうにも抑えられない「前田欲」がカラダの内側からムクムクと湧き上がってきた。
前田食堂、元気かな。
目玉焼きのサイズまだSSかな。
あの汚い感じ、まだ現役かな。
噂では、未だに牛そばバブルは続いていると聞いていた。ここまでくるともはやバブルではない。前田食堂の牛そばは、沖縄そば界で殿堂入りを果たしたと言えるかもしれない。
そして私と前田食堂の間で(主に一方的に)深まっていた溝も、ここまで年月が過ぎてしまうともうどうでもいい。溝の底に溜まっていたすねた気持ちは干からび、「前田、すごいなぁ」と尊敬の念すら湧いてくるほどに私も歳をとった。
もちろん過去の数年、前田に一度も足を運ばなかったわけではない。「村に帰ってきたことだし、とりあえず前田行っとく?」というような惰性的なノリで何度か前田には足を踏み入れた。
でもその時、私はあえてあの「お気に入り」のメニューを頼むことはなかった。あの目玉焼き事件で受けたショックの再来が怖かったのかもしれない。私は他の観光客と同じように牛そばを頼み、淡々と牛そばを口にした。
そして2016年秋、もうそんなことはどうでも良くなった。純粋に、私が恋したあのお気に入りのメニューが食べたくて仕方なくなった。すでにご周知かと思うが、それはもちろん牛そばではない。私が幼い頃から大好きすぎて震えていた、前田食堂といえばなメニューがこちら。
前田食堂といえば「焼肉おかず」でしょう!!
そう、私の家族は、昔から前田食堂の「焼肉おかず」の大ファンだった。父や母が不意に放つ「お昼ご飯、前田行く?」の言葉にどれほど心が躍ったことか。
「焼肉おかずが食べれる!」と思っただけで、一気に世界が輝きだすのだ。それほど「焼肉おかず」は魅力的だ。
この「焼肉おかず」、とにかくにんにくが強烈で、これを食べた後には「玄関に足を踏み入れた瞬間、前田食堂に行ったなと分かる」と言われていたほどだ。
私たち家族は、そのにんにく臭に立ち向かうべく、
・食前にコップ1杯の牛乳を飲む
・食後ブレスケアを大量に飲む
・食後ミントガムをかみ続ける
・(あれば)りんごを食べる
など様々な手を尽くしたが、どれも「焼肉おかず」のにんにくに太刀打ちできるようなものではなかった。
玄関に足を踏み入れた瞬間から匂うのだから、もはや胃の中だけの問題ではない。全身の毛穴という毛穴から、にんにく臭を放っているのだ。「焼肉おかず」を食した後は、人間のカタチをした巨大なにんにくと化すのだ。それほど「焼肉おかず」のにんにくは強烈だった。
だからこそ、人と数日会う予定がないときにしか食べることのできない、スペシャルなメニューだったのだ。
数年振りに「焼肉おかず」を食べに前田食堂へ!
そしてとうとう、「焼肉おかず」を目当てに前田食堂へ足を踏み入れる瞬間がやってきた。久しぶりの前田食堂は、こんな風にやっぱり混んでいる。
久しぶりに訪れた前田食堂の外にはパネルメニューが置かれ、「待ち時間に何食べたいか考えておいてね」という人気店にしかできないサービスまで展開していた。
そして相手が外国人の観光客だとわかると、「ビーフそば?」「ツー(two)ね!」と、ちゃんぷる英語で難なくコミュニケーションをとっていた。
「ノー!これはレギュラーそば!ビーフそばこれね!」などと、相手が注文するメニュー間違えそうになるとパネルメニューを取り出し、指さし会話でしっかり意志の疎通をはかっている。
前田食堂の顧客を満足させる姿勢に妥協は感じられない。いつの間にか前田食堂は、世界を相手に商売をしている。そんな姿にたくましささえ感じる。
こうして前田食堂の進化を目の当たりにしながら待つこと約15分。やっと順番が回ってきた!
私が注文したのはもちろん、長年の想い食「焼肉おかず」だ。
「焼肉おかず」の目玉焼き、SSじゃなくなっていた!
運ばれた焼肉おかずを目にした瞬間、元の姿に戻った目玉焼きと対面した。そう、これはもうSSサイズではない。前田食堂はことの重大さに気づいたのか、目玉焼きをS-Mサイズに戻してくれた!
これで一気に私の中のわだかまりは消えた。父とともに「卵、前より大きくなったね」とその喜びを分かち合った。
因みに父の目玉焼きの食べ方は白米に乗せて卵ごはんにする方法。味付けとして、お皿の下に溜まっている肉汁もちょこっとかける。こうすれば、前田食堂流ガーリックライスの完成だ。卵ごはん好きには、ぜひ一度試してほしい食べ方だ。
定食に付いているそばも、実は超おいしい!
「焼肉おかず」を注文した者を満足させる要素として忘れてはいけないのが、セットで付いてくるミニ沖縄そばだ。この沖縄そばがあなどれない。
牛そばとは味が全然異なるけれど、スープが何とも美味なのだ。これが前田食堂の本来のそばなのかもしれない。その温かなスープを胃に流し込んだ時もまた至福のひと時だ。
それはまるでぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中に、涼しいそよ風がフワ~っと入ってくるような感じ。何を食べてもにんにくにしか感じなくなってきた頃に、この優しいスープが味覚を思い起こさせてくれる。
「焼肉おかず」を完成させるにはこのミニ沖縄そばの存在は絶対である。
そしてにんにくお肉、最高だった!
そしてもちろん、お肉は期待を裏切らないにんにく感だった。久しぶりのその香りを、ひと口ひと口大切にしながら食べていたがあっという間に間食してしまった。
恐れていた食後のにんにく臭がない!?
前田食堂の進化ははかり知れない。食度は人間をにんにくへと化してしたあの強烈なにんにく臭が、今回はかすかに気になる程度だった(もちろん、普通のにんにく料理を食べた後程度には匂う)。
けれども昔ほどまでは気にならない。もしかしたら前田食堂は「匂わないにんにく」を使っているのかもしれない。確かに思えば、昔よりにんにくの辛みはあまり感じなかったような気がする。
その匂いの弱さに少し拍子抜けしてしまったが、何はともあれ「焼肉おかず」の魅力は健在だった!
前田食堂をリピートする機会があるという方は、次は絶対に「焼肉おかず」を注文してほしい。にんにく好きなら尚更、このメニューを食べないのは損だ。きっといつか、挑戦してみてね!
店内に飾られている数々の著名人の写真
ちょっとした余談になるが、前田食堂の店内には数多くの著名人との写真が飾られている。牛そばが有名になってからは、テレビのロケもちょくちょく来ているようだ。中でも特筆すべきは、ダウンタウンの松ちゃんもプライベートで来ていたということだ。
松ちゃんが来たのは前田食堂の牛そばブームが始まったばかりの頃。何がかは分からないが、さすがの松ちゃんである。いつか松ちゃんに会う機会があるのならば、「前田食堂のある大宜味村出身です」と、存分に前田食堂を利用させてもらおうと思う。
「焼肉おかず」を食べに、大宜味村まで足を運んでね
大宜味村は、那覇や南部に住んでいる人からすると「果ての地」ほど遠いという印象を持たれている。確かに那覇から下道を通ってくれば、3時間は確実にかかる(因みにドライブし慣れている私なら高速を利用して60分~80分だ)。
でも長距離のドライブをしてでも「焼肉おかず」は食べてみる価値があるはずだ。それに大宜味村まできたら「辺戸岬」までもう少しだし、注目のパワースポット「大石林山」だって近くなる。沖縄観光や休日のデートにはもってこいのコースではないだろうか。
因みにカップルのどちらかだけが「焼肉おかず」を食べて、もうひとりは「牛そば」を食べるという選択は激しくおすすめしない。なぜなら車内に立ち込めるどちらか一方が放つにんにく臭がケンカの火種になりかねないからだ。
一方、「ふたりとも強烈ににんにく臭い」という経験は心の距離を近づける可能性がある。家族だって同様だ。「全員臭い」という体験は、家族の温かい思い出として記憶の1ぺージを彩ることだろう。
ということで、そんな貴重な体験をしに、ぜひ大宜味村まで遊びに行ってみてほしい。そして世界の人々を魅了する前田食堂の味を、ぜひその口で体験してみてね!
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