2017年6月3日にロンドン橋周辺で起こったテロの後のロンドンの様子
2017年6月3日(土)の夜10時頃、週末を楽しむ人で賑わうロンドン橋とロンドン橋に隣接するロンドン最大級の市場バラ・マーケットで悪夢のようなテロが発生しました。
2017年6月5日(月)現在、このテロで亡くなった犠牲者の数は7人となり、確認されている負傷者は48人。負傷者のうち36人は現在も病院で治療中、内21人が深刻な状況にあると報告されています。
この記事では、テロが起こった週末、ロンドンでどんなことが起こっていたのかを記録として残しておきたいと思います。
この記事/ページの目次
「8分間」にフォーカスして報道するロンドンの各メディア
テロ発生直後、イギリスの各ニュースサイトでは「8分間」にフォーカスした内容で事件を報道。たった「8分間」でテロ攻撃を収束したロンドン警察を讃えるような内容も含まれており、イギリスは常にテロに対応できる状態にあることも匂わせている。
ソース:
■8 min on London Bridge: years training for rapid response
■London attack: 8 minutes of terror and mayhem
■How the London terror attack unfolded
実行犯3人の身元確認に尽力するロンドン警察
事件発生以来、ロンドン警察は全力で実行犯3人の身元確認に奔走し、現在でも調査は進行中。証拠がまとまり次第、彼らの名前を明らかにすると発表。
また事件翌日の6月4日日曜日には、事件を起こした3人の実行犯が住んでいたとされるロンドン東部のバーキングやニューハムにある家の捜査が実施され、12人が逮捕されている。
ソース:
■London attack: Police ‘know identities of killers’
窮地の中でも「ロンドン・スピリッツ」を貫いた人がいると讃えるSNSユーザー
一方SNSでは、テロの恐怖にさらされる中でもロンドン・スピリッツを貫いた人がいることに注目が集まっていた。
テロの攻撃から逃げる中でも、パイント・ビールを離さない男性
この写真右に写っている彼が右手に持っているのは、イギリスのパブのシンボルとも言える「パイント・ビール」(イギリスではグラス1杯のビールをパイント・ビールと言う)。
テロの恐怖の中でも彼は「ロンドン・スピリッツ」を貫き、テロに屈しない姿を見せていると話題に。
▼彼の行動に対する反応(和訳はすべて個人的な感覚での意訳)
Why ISIS will never win. Attack just taken place but fella on right refuses to spill his pint.
Nazis, IRA tried. Didn’t win.
(ISISが勝利を収めることは絶対にない。攻撃は起こったけど、右側の彼がグラスに入ったビールをこぼすことはなかった。)
There’s an apparent terrorist attack in London and this guy is strolling down the street with his pint.
(ロンドンでは明らかにテロが起こっているけど、この男性は(それでも)ビールを持ちながら歩いている。)
ソース:
■Man Holding Pint As He Flees Terror Attack Becomes Symbol Of London Resistance
テロの翌日、素晴らしいサービスを提供してくれたレストランに食事代とチップを払いにきた男性
BBCのインタビューに応えている彼は、テロが起こった当時、バラ・マーケットにあるレストラン(テロで2番目に襲撃された場所)でジントニックを飲んでいた。身の危険を感じてすぐに避難したものの、テロが起こった翌日の朝、未払いだった食事代とチップをスタッフに支払うためにレストランに立ち寄った際にこのインタビューを受けた。
そこで彼はこう話している(意訳)。
「僕はこれからもロンドンでの生活を楽しみ続ける。友だちとジントニックを楽しんだり、最高にかっこいい彼といちゃいちゃしたり、素晴らしい女性と出かけたり。ロンドンは、今まで会ったことのない世界中の人たちとの出会いを楽しむことができる最高の場所なんだ」
「そしてロンドンに住んでいる僕らが多くの出会いを楽しむことこそが、ロンドンという街を素晴らしい街にしている。例えテロの恐怖にさらされたとしても、僕はこの最高の街ロンドンを楽しむことをやめたりはしない。“臆病者”たちは決して僕らの生活を壊すことはできない」
▼彼の動画を見た人たちの反応(和訳はすべて個人的な感覚での意訳)
Brilliant & defiant interview from someone who was in a restaurant attacked last night here in London. The right response from a tough city.
(昨晩テロが起こったロンドンのレストランに居合わせた人の、素晴らしく挑戦的なインタビュー。タフな街を生き抜くための正しい行動だ。)
Beautifully expressed,@RichardAngell❤️
London’s been through this many times, unfortunately, but we’ll always react this same way.
(とても美しいコメント。ロンドンは何度も困難な状況に面しているけれども、どんな時でも、私たちは(インタビューに応えた)彼と同じ行動を取り続ける。)
関連記事:
■A Man Who Witnessed The London Bridge Attack Went Back To Pay His Restaurant Bill On Sunday
■Customer returns to Borough Market restaurant to pay bill and tip staff after London terror attack
犠牲者として最初に発表されたのはカナダ人の女性
このテロの犠牲者として最初に名前が発表されたのはカナダ人の女性。彼女は、怪我を負った彼女を抱える婚約者の腕の中で息を引き取った。
カナダにいた頃はホームレスを支援するシェルターで働いていた心優しい人で、婚約者と一緒になるめに渡欧した。
ソース:
■London Bridge attack: The victims
2017年6月3日のロンドンテロで私の身の回りに起こったこと
テロがまさに起こっていた当時、私はフラットの自室のベッドの上でブログを書いていた。BBCからの速報ニュース通知でテロが起こったことを知るも、まだ状況がよくわからない。
ただその日の夜はBBCからの速報ニュース通知が深夜まで続き、これはすごい重大なニュースだと実感し始める。
そこにあるスーツケースに気をつけて
テロがあった翌日、私はロンドン郊外へハイキングに出かける予定があった。予定は中止されなかったので、集合場所に向かうために朝早くに家を出て駅に向かった。その道中、反対側の道を歩いていた女性に声をかけられる。
「そこにちょっと気になるスーツケースがあるから、こっち側の道を歩いた方がいいと思う」
そう言われて私の行く手に視線を向けると、道端に古くてボロボロのスーツケースが放置されていた。確かに普段こんなスーツケースを見ることはない。そこで私は自分の危機管理能力の低さを認識した。
よく日本でも、駅なんかで「気になる荷物を見つけたら駅員か警察に連絡を」という案内を見かけるけれども、実際には「気になる荷物」自体のイメージがつかなかった。
でもロンドンを含め、テロを身近に感じている人たちは常に「気になる荷物」に対して「ピーン」とくる感覚を持っている。
それに比べて私は、つい数時間前にロンドン橋でテロがあったにも関わらず、「気になるスーツケース」の存在に全く気がつかなかった。
もしも気がついたとしても、日本人的な感覚から「酔っ払った誰かが忘れたか、要らなくなったから捨てたんだろう」としか思わなかったと思う。自分がヨーロッパというテロの標的にされている国にいることを、もっともっと意識するべきだと思った瞬間だった。
イベントを主催する彼が、集合場所として駅前を避ける理由
テロの翌日に出かけたハイキングの主催者は、私がロンドンに来てからできた数少ない友人の一人。
ハイキングの集合場所で彼と会うなり、すぐにあがった話題は言うまでもなく昨晩起こったテロについてだった。
「ハイキングの集合場所として、駅前を指定しない理由は何だと思う?」
話している途中で彼はこんな質問を投げてきた。
「……もしかして、テロの標的になるのを避けるため?」
彼の口から出た答えは「YES」。朝の駅前で起きたスーツケースの一件に加えて、ここでもヨーロッパに住む人たちのテロへの意識の高さを感じる。
彼の考えはこう。
そもそも多くの人が集まるターミナル駅は、テロが起こりやすい場所。さらにそこで数十名の人がかたまって立っていたら、テロリストにとっては手っ取り早くインパクトを与えることができる良い標的になる。だから彼はいつも、なるべくリスクの少ない場所を集合場所として選ぶようにしている。
普段テロについて話す機会が全くなかったから分からなかったけど、日常からこんなことを考えていたのかと思うと、テロが彼らの生活にとっていかに身近なものなのかが分かる。
犠牲者7人のうちの1人が、友人の知人だった
そして悲しいことに、今回のテロで亡くなった犠牲者7人のうち、1人はそのイベント主催者である彼の顔見知りの人だった。
彼が働く会社はテロが起きたロンドン橋とバラ・マーケットの近くにあり、彼は平日は毎日そこに足を運んでいる。
そこでよく見かける飲食店のウエイターが犠牲者の一人だったとのこと。
このことは今回のテロをさらに「ショッキング」でより「リアル」なものとし、同じことがいつ自分の身に起こってもおかしくないという思いにさせられる。
2017年3月22日(水)にウエストミンスター橋でテロが起き、今回のロンドン橋でのテロが起きるたった2週間前・2017年5月22日(月)にマンチェスターで開催されたアリアナ・グランデのコンサートを襲ったテロもまだ記憶に新しい。
そして今回の一件。3カ月もしない内に立て続けに起こっているイギリス国内でのテロ。日々、本当に意識しながら、もっともっと自らの危機管理の意識・能力を高めていかなくてはと思わされた出来事だった。
えのさん、心配してくれてありがとう(涙)! 私、元気だよ!!
ロンドン物騒ですが生きてると思ってました(´・ω・`)