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ローマ観光『ローマの休日』ロケ地巡り完璧ガイド:名シーンと観光地の詳細付き

永遠の都「ローマ」を舞台にした名画の一つといえば、言わずと知れた『ローマの休日』。本記事では、そんな『ローマの休日』が収録されたロケ地を、詳細観光ガイド付きでご紹介。映画の名シーンと共に、印象深いスポットを巡っていこう。

※映画のシーンに関する画像は、『ローマの休日』がパブリック・ドメインとなっていることから使用しています。

この記事/ページの目次

映画『ローマの休日』あらすじ

まずは『ローマの休日』に関する基本的な情報からおさらい。

登場人物

ローマの休日ロケ地巡り

新聞記者のジョーとアン王女

  • アン王女:ヨーロッパ最古の王室の王位継承者(オードリー・ヘップバーン)
  • アメリカ人の新聞記者ジョー:なかなかスクープがとれず、くすぶっている新聞記者(グレゴリー・ペック)

ストーリー(エピローグ)

ローマの休日ロケ地巡り

ぎっしり詰まったスケジュールを不機嫌そうに聞くアン王女

公務でローマを訪れていたアン王女。表向きはしっかりと公務をこなしているように見える王女だけれども、分刻みで組まれた窒息するようなスケジュールに、ついに我慢は限界に。極度のストレス状態に陥り、ヒステリーを起こしてしまう。

ローマの休日ロケ地巡り

鎮静剤を打つ主治医

そんなアン王女を落ち着かせるべく、アン王女の侍従(じじゅう)は王女に鎮静剤を打つよう主治医に指示。アン王女は一時落ち着きを取り戻したかのように振る舞うも、反発する気持ちを抑えきれず、侍従たちの目を盗んでこっそり外の世界へと抜け出してしまった。

ローマの休日ロケ地巡り

宮殿から抜け出すアン王女

さて、抜け出したはいいものの、ようやく効き始めた鎮静剤によってフラフラ状態のアン王女。強烈な睡魔に襲われて歩くこともままならず、ついには路上のベンチで一人、眠りに落ち入ってしまう。

ローマの休日ロケ地巡り

ベンチで眠るアン王女を発見したジョー

そんなアン王女の前を偶然通りかかったのが、アメリカ人の新聞記者ジョー。真夜中に外で眠っている女の子を放っておくわけにもいかず、何とかアン王女を起こして帰宅させようとするも……。

【ロケ地1:フォロ・ロマーノ】アン王女とジョーが出会った場所

ローマの休日ロケ地巡り

酒に弱いなら飲むなと説教をするジョー

ある晩賭博場で賭けをしていたジョー。最後の大勝負に出るも結果は散々で、一人寂しく帰路につくことに。家に向かう夜道を歩いていると、そこにはベンチに寝転がり、寝言をブツブツ言っているアン王女の姿が。ただの酔っ払いだと思ったジョーは家に帰るようにうながすも、鎮静剤のせいで頭が回らないアン王女とはまったく会話が噛み合わない。

話にならないので、とりあえずジョーはタクシーを掴まえてアン王女を送り届けようと試みるのだが……。

フォロ・ロマーノ:古代ローマ帝国の行政・宗教の中心地だった場所

ローマの休日ロケ地巡り

様々な建物跡をみることができるフォロ・ロマーノ

「フォロ・ロマーノ」は古代ローマ遺跡の一つで、東西約300m、南北約100mに渡って広がるローマ帝国時代の政治・宗教の中心地として機能していた場所。

ローマ帝国時代、大都市には同様のフォルム(英語の「フォーラム」を語源に持つ言葉)と呼ばれる政治の中心地を設けることが一般的だったけれども、このフォロ・ロマーノはローマ帝国の首都に設けられた最初のフォルムであり、最も重要な存在として繁栄していった。

豆知識1:敷地内の散策をしたいなら入場券の購入を

ローマの休日ロケ地巡り:フォロ・ロマーノ

古代ローマ時代のままの、石の道も残っている

フォロ・ロマーノ内にある多くの遺跡は原型をとどめていないけれども、神殿や大聖堂、行政機関の建物の「断片」から当時の記憶を辿ることができる。隣接しているコロッセオへの入場とセットになったチケットを購入することで、フォロ・ロマーノ、パラティーノの丘にも入場することができる。

またフォロ・ロマーノの中に入場しなくても、後述する「ロケ地8」のカンピドーリオの丘からフォロ・ロマーノの中の様子を眺めることも可能。

豆知識2:映画と似た景色を見たいなら「セプティミウス・セウェルスの凱旋門」へ

ローマの休日ロケ地巡り:フォロ・ロマーノ

セプティミウス・セウェルスの凱旋門(左側・一部)とサートゥルヌス神殿(右側)

ふたりが座っていたベンチは現在はないけれども、フォロ・ロマーノの西側(カンピドーリオの丘の近く)にある「セプティミウス・セウェルスの凱旋門」の近くに行き、隣接する「サートゥルヌス神殿」を凱旋門の背後に見る位置に立つことで、映画と同じような背景を見ることができる。

【ロケ地2:マルグッタ通り】ジョーのアパートがある場所

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女を家に送ろうと試みるも……

アン王女をタクシーに乗せ、「どこに住んでいるんだ?」とジョーが問いかけるも「私の家はコロッセオ」とまともに答えようとしないアン王女。ぐずぐずしてなかなか行き先を決めない乗客に痺れを切らしたタクシー運転手は「俺だって家で子どもが待ってるんだ、早く行き先を決めてくれよ!」とジョーに迫る。

ローマの休日ロケ地巡り

話にならないアン王女

相変わらず寝ぼけて話にならないアン王女と、攻め立ててくるタクシー運転手に挟まれたジョー。にっちもさっちもいかなくなり、ついに堪忍して自分の家がある「マルグッタ通り51番まで」とタクシー運転手に告げる。

ローマの休日ロケ地巡り

ジョーの部屋をエレベーターの中だと思うアン王女

フラつくアン王女を連れて部屋に戻ってきたジョー。小さな住み家を見たことがないアン王女は、ジョーの部屋に入った途端「ここはエレベーターなの?」ととぼけた質問をする。「ここは家で、今夜はここで寝るんだ」とジョーに言われ、状況を理解したように見えたアン王女。

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女をベッドからどけようとするジョー

かと思ったら「バラの蕾(つぼみ)つきのネグリジェをちょうだい」とジョーにリクエストをする始末。もちろんそんなものはジョーの家にある訳もなく、ごくごく普通のジョーのパジャマを借り、ベッドを独占して気持ち良さそうに眠りにつくのであった(その数分後、ジョーによってソファに引きずり落とされる)。

マルグッタ通り:ローマの中で最も美しい道の一つと言われる通り

ローマの休日ロケ地巡り:マルグッタ通り

落ち着いた雰囲気の中、緑が溢れるマルグッタ通り

観光客でごった返すスペイン広場から歩いて5分ほどのところ(3ブロック先)にあるにも関わらず、観光客は少なく、とても静かで洗練された雰囲気に包まれているのが「マルグッタ通り」。

その特異な雰囲気は「ローマ一美しい通りの一つ」とも言われ、緑が溢れる道を散歩するだけでも気持ちが良い。ちなみにジョーが住んでいた「マルグッタ通り51番」の建物は私有地なので特に見学ができるわけではないけれども、アン王女とジョーが歩いた足跡を辿るだけでも十分に楽しめる。

【ロケ地3:トレビの泉】ローマの街の散策を楽しむアン王女

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女の失踪を知り動揺する王室

一方王室は、アン王女が行方不明になったと大騒ぎ。翌日予定していた会見は全て「アン王女の急な体調不良」を理由にキャンセルし、秘密裏にアン王女の捜索を開始する。

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女失踪のニュースを初めて知ったジョー

そんな中、未だアン王女の正体を知らない(ただの酔っ払いの女と思っていた)ジョーは、熟睡中のアン王女を部屋に残したまま勤務先の新聞社へ出社。そこで初めて王室からのアン王女に関する速報を耳にし、自分の家に泊まっているのがアン王女であることを知る。

ローマの休日ロケ地巡り

ここはどこ?と正気に戻ったアン王女

慌てて部屋に戻ったジョー。そこには、ようやく目を覚まし、すっかり正気を取り戻したアン王女が。自分の身元がジョーにバレてはいけないと、アン王女は自らの名前を「アーニャ」と告げる。

ローマの休日ロケ地巡り:トレビの泉

策中にトレビの泉を偶然発見し、しばし見つめるアン王女(手前スカートの女性)

そして一晩面倒を見てくれたジョーにお礼を伝え、宮殿へ戻るべく、一人ローマの街へと繰り出して行った。

トレビの泉:世界中の観光客がコインを投げる、ローマ随一の観光名所

ローマの休日ロケ地巡り:トレビの泉

言わずと知れたトレビの泉

ローマの観光地として言わずと知れたスポットの一つ「トレビの泉」。足を運んだ際には、泉の中にコインを投げることも観光客のお約束となっている。泉に投げるコインの数によって願掛けする内容が異なり、

  • 1枚:再びローマに戻ってこられる
  • 2枚:好きな人と結ばれる
  • 3枚:縁を切りたい人と縁切りできる(主に離婚、恋人との別れを願う)

と言われている。正しいコインの投げ方は「泉に背を向けて右の手の平にコインを載せ、左肩越しに投げる」という方法。さて、あなたは何枚のコインを投げる?

豆知識1:トレビの泉に沈む大金の行方

ローマの休日ロケ地巡り:トレビの泉

トレビの泉に沈む大量のコイン

トレビの泉に投げられたコインは定期的に収集されており、2018年度まではカトリックの慈善団体に全額寄付されることが約束されている。ちなみに2016年度に収集されたコインの総額は、なんと約140万ユーロ(約1億5800万円)。

ローマの休日ロケ地巡り:トレビの泉

観光客で常にごった返しているトレビの泉

この莫大な金額を巡って、2017年末からローマ市と慈善団体との間でちょっとした揉め事が発生。その内容は、財政難に苦しむローマ市がトレビの泉に投げられたコインを市政の財源にしたいと主張し始め、それをカトリックの慈善団体が認めないという展開。この問題は2018年現在も続いており、このトレビの泉に投げられた1億をも超える大金の今後の行方にも注目が集まっている。

豆知識2:FENDIの豪華なファッションショーが行われたことも

ローマの休日ロケ地巡り:トレビの泉

ライトアップされる中、泉部分がショーのステージとなった

話は変わってこのトレビの泉、2014年〜2015年に大掛かりな修復工事が行われたことで有名だけれども、その修復工事のメインスポンサーとなったのが、イタリアを代表するハイブランドの一つ、フェンディ(FENDI)。

そしてそのフェンディは、修復工事を終えた翌年2016年の七夕の夜、トレビの泉にステージを組んで豪華なファッションショーを開催。トップモデルが集結し、華やかな姿に生まれ変わったトレビの泉を背景に繰り広げられたショーは、世界中の人々の魅了した一件となった。

【ロケ地4:スペイン広場】ジョーがアン王女に忍び寄った階段

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女のスクープを上司に持ちかけるジョー

アン王女の正体に気づいたジョーは、新聞社の上司に王女のスクープを約束していた。そのために一人部屋を出て行ったアン王女の後をつけて何とかスクープを狙おうとするも、手元にカメラがなく、証拠を残すことができない。

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女の正体に気づき、スクープを狙って近付くジョー

それでも諦めきれず、スペイン広場の階段でジェラートを頬張るアン王女の元へ、偶然を装って再接近。「もう帰らなくちゃ」と立ち去ろうとするアン王女に「もう少しだけ冒険を続けないか」と提案する。

ローマの休日ロケ地巡り

アン王女のしたいことを全部しようと提案する

そんなジョーの提案に少し乗り気になったアン王女。「実は今までずっとやりたかったことがあるの」と告白したことは、「カフェに行ったり、ウインドーショッピングをしたり、雨の中を歩いてみたり……」というたわいもないこと。

それを聞いたジョーは「今日1日休みにするから、(スクープのために)これからふたりでそれを全部やろう!」とアン王女の手を引き、スペイン広場を後にした。

スペイン広場:『ローマの休日』をきっかけに一躍ローマの観光名所に

ローマの休日ロケ地巡り:スペイン広場

多くの観光客で賑わうスペイン階段

『ローマの休日』をきっかけに一躍ローマの観光名所と化したのが、135段の階段を有するこの「スペイン広場」。広場に「スペイン」という名前がついているのは、階段を降りたところにバチカン市国のスペイン大使館があることに由来する。

豆知識1:スペイン階段での飲食は、最高で約6.5万円の罰金

イタリア旅行の定番スイーツ・ジェラート

イタリア旅行の定番スイーツ・ジェラート

映画の中でアン王女はジェラートを食べていたけれど、2012年以降、スペイン階段での飲食はイタリアの法律によって禁止されている。もしも階段で飲食している所を見つかったら、最高で500ユーロ(約6.5万円)の罰金が科せられるのでご注意を。

豆知識2:階段下にある「舟の噴水」はローマの偉大な彫刻家親子の作品

ローマの休日ロケ地巡り:スペイン広場

ベルニーニ親子が手がけた船の噴水

スペイン広場に来たら見逃してはいけないものが、階段下にある「舟の噴水」。「バルカッチャ(=沈みかけている舟)」とも呼ばれるこの噴水は、1629年、ローマを代表する彫刻家ピエトロ・ベルニーニとジャン・ロレンツォ・ベルニーニ親子によって手がけられたもの。

沈みかけている舟の形をしている理由は、ローマに流れるテヴェレ川が1598年に氾濫を起こした際、一艘の舟がこの場所まで流れ着いたという言い伝えから。ただし、その真相は分からないままとなっている。

豆知識3:広場前の「コンドッティ通り」はローマのハイエンドエリア

ローマの休日ロケ地巡り:スペイン広場

スペイン広場のテラスから見えるコンドッティ通り(写真中央)

スペイン階段と舟の噴水を背にした前方に続いている道は、「コンドッティ通り」と呼ばれるローマ一のハイエンドエリア。別名「ブランド通り」とも呼ばれるその通りには、ブルガリ(BVLGARI)、カルティエ(Cartier)、セリーヌ(CÉLINE)、ディオール(Dior)、アルマーニ(GIORGIO ARMANI)、ハリー・ウィンストン(Harry Winston)、エルメス(HERMÈS)、ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)、プラダ(PRADA)、フェラガモ(Salvatore Ferragamo)など、多くのラグジュアリーブランドのサロンがズラリ。

ローマの休日ロケ地巡り:コンドッティ通り

ブルガリで3番目に古い店舗、コンドッティ通り10番店

コンドッティ通りの全長は約300メートル。通りを歩ききるのに5分もかからないので、ローマのセレブリティな雰囲気を感じるべく歩いてみるのも悪くない。

【ロケ地5:パンテオン神殿】アン王女のカフェデビュー

ローマの休日ロケ地巡り

「特別な日にだけ飲む」というシャンパンを注文した王女

アン王女の行きたい場所の一つ、カフェにやってきたふたり。悪気なくシャンパンを注文するアン王女にお金のないジョーはたじろぐも、友人カメラマン・アーヴィングと合流することで何とかやり過ごす。

ローマの休日ロケ地巡り

ン王女が初めてタバコを吸う瞬間を、手元のライター型カメラで盗撮するアーヴィング

その後カフェの奥にアーヴィングを連れ出し、全ての事情を説明するジョー。ふたりで手を組み「アン王女の24時間のローマの休日」をスクープしようと持ちかける。大スクープ記事で得られる大金に興奮したアーヴィングは、もちろんジョーのオファーを快諾。そこからふたりは、アン王女への秘密の取材を開始する。

パンテオン神殿:約2000年の歴史を誇る、世界最大規模の石造り建築

ローマの休日ロケ地巡り:パンテオン

街中に突然現れるパンテオン

現在は「教会」としてミサも行われている「パンテオン神殿」。教会なのに神殿? その理由は、この建物はもともと、多神教だったローマ帝国時代に様々な神様(ローマ神)を奉るための「万神殿」として建てられたことから。

「パンテオン」という言葉自体も、ギリシア語のPan(パン=全ての)、theos(テオス=神)に由来しており、「全ての神々のための神殿(万神殿)」を意味している。

ローマの休日ロケ地巡り:パンテオン

パンテオン正面にある噴水の像の表情にも注目

パンテオン神殿が初めてこの地に建てられたのは、約2000年も昔に遡る紀元前25年のこと。あいにく初代パンテオンは火事によって焼失してしまったため、現在あるのは2代目パンテオン。西暦118年から128年にかけて再建築され、以降、当時の姿のままで存在し続けている。

豆知識1:「天使の設計」とまで賞賛された、驚くべき建築技術

ローマの休日ロケ地巡り:パンテオン

パンテオンの天井(採光窓の直径は9メートル)

現存する石造り建築物としては、世界最大規模の建物とされているパンテオン。天井には「オクルス(ラテン語で目)」と呼ばれる設置の難易度が高い円状の採光窓が設けられており、古代ローマ人の驚くべき建築技術の高さが評価されている。

どれほど評価されているかというと、イタリアを代表する芸術家の大御所、あのミケランジェロが「これは天使の設計だ!」と手放しで大絶賛したほどだとか。

豆知識2:神殿内には、ルネサンスの巨匠ラファエロが眠っている

ローマの休日ロケ地巡り:パンテオン

パンテオン内に展示されている初代イタリア国王の棺

永遠に色褪せることのない、洗練された美しさに魅せられた芸術家はミケランジェロのみに止まらず、ルネサンスを代表するまたもや芸術界の大巨匠・ラファエロも、パンテオンに魅了されたうちの一人。

自身の死後はパンテオンに埋葬されることを望み、その遺言通り、彼の遺体はパンテオンの内部に保管されている。ちなみにラファエロが眠る棺は、パンテオンの訪問者ならも誰でも見学できるようになっている。

また芸術家ラファエロの他に、イタリア統一後の初代イタリア国王「ヴィットーリオ・エマヌエル2世」も、同じくパンテオンに眠っている。

豆知識3:2018年5月より入場料が有料に

ローマの休日ロケ地巡り:パンテオン

パンテオン内部

かつては入場無料だったパンテオンだけれども、2018年5月より、観光客1人あたり2ユーロ(約260円)の入場料の支払いが必要になった。

有料化の主な目的は、イタリアの文化財収入を増やすこと。また、収入の一部はパンテオン自体の維持費にも充てられる。ただしミサに参加するために訪れるなど、信者による教会訪問においては、引き続き入場料が免除となる。

【ロケ地6:コロッセオ】ベスパに乗ってローマをデート1

ローマの休日ロケ地巡り

『ローマの休日』を代表する名シーン

ローマの休日ロケ地巡り

ベスパに乗って、ローマの観光名所をドライブするふたり

パンテオンの前にあるカフェを出た後に3人が向かった先は、コロッセオ。ジョーがアン王女をベスパの後ろに乗せ、カメラマンのアーヴィングが車に乗って二人を後ろから追いかける(盗撮する)というスタイルで進んで行く。

盗撮されているとはつゆ知らず、コロッセオの中にも入場し、ローマ観光を満喫するアン王女。そしてそんなアン王女の様子を、ジョーとアーヴィングは取材・撮影し続けていく。

コロッセオ:残虐な殺し合いに市民が沸いた、ローマ帝国の巨大闘技場

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

ローマの定番人気観光地・コロッセオ

「ロケ地1」でアン王女とジョーが出会った場所として紹介した「フォロ・ロマーノ」の東側に位置するのが、トレビの泉と並んでローマのシンボルとも言える大人気観光地の「コロッセオ」。

その収容可能人数は一度に約5万人〜7万人とも言われており、超巨大な闘技場跡地となっている(参考までに本で一番大きいアリーナは「さいたまスーパーアリーナ」で、その収容人数は約2.2万人)。

ローマの休日ロケ地巡り

模擬海戦の様子 By Kuhn [Public domain], via Wikimedia Commons


西暦72年から建築工事が始まり、第10代ローマ皇帝ティトゥスが治世していた西暦80年に完成。完成当時、コロッセオの正式なオープンを市民に告示するとともに、100日間にも渡る盛大な奉献式(ほうけんしき:神様に捧げるためのショーやゲーム)が開催された。

奉献式では闘技場に水を張って歴史的な海戦を再現する「模擬海戦」や、猛獣、剣闘士同士の殺し合いなどが連日開催され、100日の間に約5,000頭の猛獣、数百人もの剣闘士が命を落としたと言われている。

豆知識1:残虐な見せ物は、市民のうっぷんをはらすのが目的だった?

処刑者へと近づいていく猛獣 via Wikimedia Commons

今となってはその壮大な佇まいと緻密な建築技術によって多くの人を魅了しているコロッセオだけれども、「闘技場」という名前がついている通り、ここはかつて猛獣や剣闘士たちの無惨な殺し合いや公開処刑が行われてた場所。そして目の前で多くの命が途絶えていく様子に観客は声をあげて熱狂していたという、現代では少し考えられないような光景が繰り広げられていた。

この残虐なショーはローマ帝国がキリスト教化(西暦313年:ミラノ勅令)する西暦310年頃まで、なんと約300年にも渡って続いていたのだけれども、この残虐なショーの目的は市民のうっぷんを晴らすためだったとも言われている。

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

遠くからでも目立つコロッセオ

コロッセオの建設が始まった当時(西暦72年)のローマは、ローマ大火やローマ内戦を経た後で街は復興の真っ只中、国政は財政難に陥り、市民は戦争で疲弊して活力ゼロのどんよりムード。そんな暗い雰囲気の中、国の緊縮財政によって新たな課税などが科せられたものだから、ローマ市民の生活はより厳しいものに。

そんな暗い雰囲気を少しでも明るくすべく、「市民への娯楽を提供する場所」として、このコロッセオの建築が計画された。

でも実はもう一つ、ローマ市民には秘密だった裏の目的も。市民が没頭するであろう「斬新なエンターテイメント」を提案することで国政への意識をそらせ、反乱を起こさない状態にするというのが当時の皇帝の魂胆だったとか。

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

観客の導線をスムーズにするため、各門の上には番号が振られていた(観客は自分のチケットに書かれている番号の門から入退場するというシステム)

ちなみにその計画を考案したのは、先述した100日間の盛大な奉献式を開催した第10代ローマ皇帝ティトゥスではなく、そのお父さんにあたる、第9第ローマ皇帝ウェスパシアヌス。コロッセオの建設を提案した時にすでに老齢だった彼は、コロッセオの完成を目にすることなくこの世を去った。

豆知識2:エンタメ性も抜群、地下から飛び出す猛獣や剣闘士たち

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

地下がむき出し状態のコロッセオ

現在コロッセオのアリーナ(ステージ部分)はほとんどの部分が失われ、地下がむき出しになっている状態。丸見えの地下には、猛獣たちの檻を置くスペースや、剣闘士たちの待機部屋などの小さな部屋が密集。複雑に入り組んでいる様に見えるのだけれども、実は「この地下こそがコロッセオの一番の見どころ」という人もいるほど、緻密な設計が施されている。

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

一部だけ残っているアリーナエリア(手前)

特に「地下からアリーナにつながる構造がすごい」と注目されており、猛獣や剣闘士たちはエレベーターを使って地下から飛び出すように登場するという仕掛けだったそう。それはまさに、コンサート会場で歌手が地下から飛び出してくるようなイメージ。地下からパッと飛び出す猛獣や剣闘士たちの姿に、かつての観客もきっと大興奮だったに違いない。

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

かつてはステージで覆われていた地下

ちなみにコロッセオは有料で内部を見学することができるけれども、通常の入場チケットでは地下部分を見学することはできない。地下見学を希望する場合には「UNDERGROUND TICKETS(16ユーロ:約2,050円)」の購入が別途必要になるので、訪問前に購入しておけばスムーズに見学を進められる。

豆知識3:4階建ての観客席は身分ごとに席が決まり、ショーにはプログラムもあった

ローマの休日ロケ地巡り:コロッセオ

窓も4階層になっている

コロッセオの観客席は4階建てになっており、アリーナに一番近い1階は貴族階級、2階は騎士、3階に一般市民、最上階の4階は市民権を持たない奴隷や女性用の席と決められていた。1席あたりの幅の広さは4階にいくに従って狭まり、座り心地の面でも差別化が図られている。

またコロッセオで開催されるショーにはプログラムがあり、

  • 午前中:猛獣同士または猛獣 VS 剣闘士
  • お昼時:罪人の公開処刑
  • 夕方:剣闘士同士の戦い(1日のハイライト)

という内容で開催されていた。

【ロケ地7:ヴェネツィア広場】ベスパに乗ってローマをデート2

ローマの休日ロケ地巡り

引き続きベスパでのドライブデートを楽しむふたり

コロッセオを見学した後も引き続き、ジョーとアン王女のベスパデートは続く。アン王女を後ろに乗せ、ローマ市内の名所を見せて案内するジョー。そしてアーヴィングも引き続き、そんなふたりを追いかけて撮影し続ける。

ヴェネツィア広場:ローマの「おヘソ」と呼ばれる大きな広場

ローマの休日ロケ地巡り:ヴィットーリオ・エマヌエル2世記念堂

ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂

ローマにある建物の中でも随一の大きさを誇り、圧巻の存在感を放つ「ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂」がシンボルとなっている「ヴェネツィア広場」。広場に「ヴェネツィア」という名前がついているのは、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂を背にして左側に、ヴェネツィア宮殿があることに由来する。

ヴェネツィア広場はローマ市の主要な3つの道路、フォーリ・インペリアーリ通り、コルソ通り、プレビシート通りが接続するロータリーとなっていることから、「ローマのおへそ」という愛称もつけられている。交通量は昼夜を問わず多く、観光に便利ないくつかのローカルのバス停もここヴェネツィア広場に面している。

豆知識1:かつて「入れ歯」と蔑称されていた記念堂

ローマの休日ロケ地巡り:ヴィットーリオ・エマヌエル2世記念堂

ライトアップされた様子も必見

幅135メートル、高さ70メートル(建物の左右上部にある羽のついた女神像を含めれば81メートル)、総面積1万7,000平方メートル(東京ドームの敷地面積の約3分の1)にも及ぶ巨大な記念堂は、「ロケ地1」で紹介した「フォロ・ロマーノ」や次に紹介する「カンピドーリオの丘」に隣接しているため、ローマにある重要な歴史スポットの景観を乱す存在として、着工当時は地元民から多く反対の声が上がっていた。

巨大な記念堂が完成した当時(1925年)、その外観から、可愛いところでは「ウエディングケーキ」、「タイプライター」などと揶揄され、建設に反対していた人々からは、皮肉たっぷりに「入れ歯」などと呼ばれたりしていた。

豆知識2:イタリア王国統一の記念堂、かつ無名戦士のお墓でもある

ローマの休日ロケ地巡り:ヴィットーリオ・エマヌエル2世記念堂

馬にまたがるヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の銅像

地元民からあまり歓迎されなかった背景を持つ、ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂。そもそもこの記念堂が建てられた目的は、1885年にイタリア王国統一を果たしたヴィットーリオ・エマヌエーレ2世を讃えるため。つまりこの建物は、イタリア王国統一を記念した巨大モニュメントということ。

ローマの休日ロケ地巡り:ヴィットーリオ・エマヌエル2世記念堂

たくさんの彫刻が施されている部分が無名戦士の墓

また単なるモニュメントだけではなく、イタリア王国及びイタリア共和国のために命を捧げた「無名戦士の墓」という役割も担っている。無名戦士の墓はヴィットーリオ・エマヌエーレ2世の銅像下に設けられ、兵士を弔う祭壇と灯明(とうみょう)が設置されている。

豆知識3:記念堂の屋上から見える景色は絶景

ローマの休日ロケ地巡り:ヴィットーリオ・エマヌエル2世記念堂

ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世気分でローマの街を眺める(テラスからの景色)

2007年には、屋上に上るエレベーター(有料)が設置された記念堂。その屋上からは、ローマ市街を一望することができる。無料で入れるテラスからの眺めも十分素敵だけれども、よりパノラミックな眺めを堪能したいなら、屋上へ上がってみてもいいかもしれない。

【ロケ地8:カンピドーリオの丘】暴走するアン王女を追う警察

ローマの休日ロケ地巡り

天真爛漫なアン王女の行動にハラハラするジョー

ローマ市内をドライブしている途中、ベスパをとめてジョーが路上で野暮用を行っていた所、アン王女は興味本位でベスパを運転し始める。

フラフラと危うく進んで行くアン王女に気づいたジョーは、慌ててベスパの後ろに飛び乗り、運転を変わるようにアン王女を説得。ところが、初めての体験に激しく興奮していたアン王女。自分が運転し続けると主張し、断じて譲ろうとしない。

ローマの休日ロケ地巡り

バイク警察に追われるアン王女とジョー

対向車線への侵入、人が歩く路上やマーケットへの突入など、アン王女の暴走運転にローマ市内は大混乱。いよいよ警察が出動し、サイレンを鳴らしてふたりが乗るベスパを追いかけていく。

カンピドーリオの丘:ローマ七丘のうち最も高く、最も神聖だった丘

ローマの休日ロケ地巡り:カンピドーリオの丘

少し急な坂道の階段を登って行くカンピドーリオの丘

「ロケ地7」で紹介した「ヴェネツィア広場」の背後に少し隠れるようにしてあるのが「カンピドーリオの丘」。ローマにある「七つの丘」の中で最も高い位置にあり、古代ローマ人たちが最初に定住を始めた丘。

かつて多神教だった古代ローマ時代には、ローマ神話の最高神であるジュピターを祀る神殿(ユピテル神殿)が建てられるなど、神聖な場所として重要な役割を果たしていた丘でもある。

豆知識1:丘の上の「カンピドーリオ広場」はミケランジェロがデザイン

ローマの休日ロケ地巡り:カンピドーリオ広場

カンピドーリオ広場と市庁舎

カンピドーリオの丘の上にあるのが「カンピドーリオ広場」。地面の対角線が印象的なこの広場は、ルネサンスを代表する芸術家・ミケランジェロがデザインした広場。広場の中心にはローマ帝国・五賢帝の一人、マルクス・アウレリウスの騎馬像が置かれ、騎馬像を正面に見て左手側にコンセルヴァトーリ宮殿、右手側にカピトリーノ美術館がある。

正面にある建物は、現役のローマ市庁舎(セナトリオ宮)。古代ローマ時代に最も神聖な丘と位置付けられていたカンピドーリオの丘は、現代のローマでも行政の重要な中心地となっている。

豆知識2:フォロ・ロマーノを望む展望テラスもある

ローマの休日ロケ地巡り:カンピドーリオの丘から見たフォロ・ロマーノ

カンピドーリオの丘から見たフォロ・ロマーノ

カンピドーリオの丘からは、先に紹介したローマ帝国時代の行政の中心地「フォロ・ロマーノ」の絶景を望むこともできる。市庁舎とカピトリーノ美術館の間にある細い道を降りた先にたどり着く場所が、展望テラス。

ローマの休日ロケ地巡り:カンピドーリオの丘

空中通路がある通りを抜けると展望テラスがある

特に夕暮れ時のゴールドの光に包まれる景色は格別で、ローマが「永遠の都」と称される所以はこの景色にあるのではと思わされるほど。ぜひ足を運んで、眼下に広がる「永遠のローマ」を記憶に焼き付けてほしい。

【ロケ地9:真実の口】手を食いちぎられると信じたアン王女

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警察署での取り調べを終えて出てきた3人(アン王女とジョーの間にあるのはヘラクレス神殿)

アン王女が繰り広げた暴走運転の末、結局は警察に捕まってしまうも、取り調べを事なく終えて警察署から出てきたアン王女とジョーとアーヴィングの3人。ジョーは署の近くにある「とある場所」のことを思い出し、アン王女の手を引いてそこへと向かう。

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「嘘つきの手は食いちぎられる」と説明をするジョー

着いた先が「真実の口」。「嘘つきの手は食いちぎられる」とジョーから聞かされたアン王女は、自分が王女であることを隠している(嘘をついている)負い目から「真実の口」の奥まで手を入れることができない。そこで、「あなたが手を入れてみて」とジョーに順番を渡すことに。

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嘘を信じ、緊張した面持ちでジョーの手を見つめるアン王女

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ジョーの手が食いちぎられたと思い込むアン王女

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手が無事な様子を見てまた驚く

真実の口の奥の方まで手を差し込んだ瞬間、自らの手が食いちぎらているかのように悲鳴をあげて苦しみもがき始めたジョー。そんなジョーの姿にショックを受けながらも、必死でジョーの手を引っ張って助けようとするアン王女。ジョーが真実の口から遂に手を引き出した瞬間、そこにまだある無傷の手を見て「嘘つき!」と怒りながらも安堵の表情を浮かべたアン王女だった。

真実の口:『ローマの休日』をきっかけに、連日行列を作る観光地に

ローマの休日ロケ地巡り:真実の口

映画の名シーンの1つとなっている真実の口

ローマの休日ロケ地巡り:真実の口

真実の口での撮影待ちをしている観光客

「真実の口」があるのは「サンタ・マリア・イン・コスメディン教会」という教会の敷地内。教会なので入場は無料となっているけれども、真実の口の前で写真を撮る際には「寄付」という形で1ユーロ程度払うのが暗黙の了解となっている。

ちなみに真実の口の前には季節を問わず行列ができているので、写真撮影をするためにはある程度の待ち時間が発生する覚悟を。

ローマの休日ロケ地巡り:真実の口

サンタ・マリア・イン・コスメディン教会内部

「真実の口」での撮影を終えた後は教会への入場も必然的に行うことになるので、古い教会の見学もせっかくなので楽しんでいってほしい。

豆知識:ヘラクレス神殿にも注目を

真実の口の近くにある「ヘラクレス・ウィクトール神殿」。この神殿は、映画の中で3人が警察署から出てきた直後、立ち話をしている背景に映っている(上部の画像参照)。

ローマの休日ロケ地巡り:ヘラクレス神殿

ポツンと建っているヘラクレス神殿

観光客にはあまり注目されていない神殿だけれども、この神殿が建設されたのはなんと紀元前2世紀。2000年以上も悠に超えて在り続ける、ワンダフルな古代ローマ遺跡の一つ。真実の口に行くついでに、立ち寄って見る価値は十分にある。

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ヘラクレスのブロンズ像 By User:Tetraktys (2006), CC 表示-継承 3.0, Link

ちなみにこのヘラクレス神殿では、2世紀に造られたとされるギリシャ神話の英雄・ヘラクレスのブロンズ像が4世紀に発掘されており、この像は「ロケ地8」で紹介したカンビドーリオ広場にあるカピトリーニ美術館に展示されている。

【ロケ地10:サンタンジェロ城】アン王女も参戦した大乱闘

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ダンスパーティへと向かうふたり

夜も更けてきた頃、ジョーがアン王女を連れて向かった先は、川沿いで開かれているダンス・パーティー。しばしの間、パーティーでの楽しいひと時をすごすふたり。

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王室関係者に見つかったアン王女

ところが少し離れたところには、楽しそうに踊るふたりの姿を遠くからじっと観察する男たちが。そう、アン王女は遂に王室が派遣していた私服警官たちに見つかり、強制的に滞在先へと連れ戻されようとしてしまう

乱暴に連行しようとする私服警官たち、必死に抵抗するアン王女、そしてアン王女の連行を阻止すべく私服警官にとびかかるジョー。そこに友人カメラマン・アーヴィングも加わり、ダンス会場は一気に大乱闘モードへと突入。

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ギターで追っ手を打ち叩くアン王女(右側)とその様子を撮影するアーヴィング(左側)

そして、まさかのアン王女までもが乱闘に参戦!ダンス会場の中にあったギターを掴み取り、追いかけてくる私服警官を打ち叩くというおてんばぶりを発揮。

そしてアン王女とジョーは、追っ手から逃れるためにパーティ会場のそばを流れるテヴェレ川へと飛び込んだ。

サンタンジェロ城:霊廟、都市城壁、要塞、牢獄……色んな役割を務めてきた城

ローマの休日ロケ地巡り:サンタンジェロ城

夕暮れ時のサンタンジェロ城

西暦135年、ローマ帝国・五賢帝のひとり、第14代ローマ皇帝ハドリアヌスが自らと家族のための霊廟として建設を始めたのがこの「サンタンジェロ城」。建設から4年後の西暦139年に完成した。

しばらくはハドリヌアスの霊廟として使用されていたものの、のちに軍事施設として使用され始め、西暦403年にはローマ市内を守るための都市城壁(アウレリアヌスの城壁)の一部となった。

さらに時が流れて14世紀以降になると、城のふもとに流れるテヴェレ川からの敵の侵入を防ぐための要塞として強化され、同時に牢獄や避難所としても使用されていた。1933年以降は博物館となり、ルネサンス期に活躍した画家たちの絵画や彫刻などが展示されている。

豆知識1:サンタンジェロ城は「天使の城」という意味

ローマの休日ロケ地巡り:サンタンジェロ城

橋の両端と城の頂上には天使の像が置かれている

サンタンジェロ城は、イタリア語では「キャステル・サンタ・アンジェロ(Castel Sant’Angelo)」とう名称で、

  • サンタ(Sant)=聖人
  • アンジェロ(Angelo)=天使

という意味を持つ。つまりは「天使の城(聖天使城)」ということ。

そもそもは「ハドリアヌスのお墓」として建てられたはずのこの建物が、なぜ「天使の城」と呼ばれるようになったのか。その始まりは、遡ること西暦590年。当時のローマは感染症・ペストが大流行中で、街は大混乱状態。

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サンタンジェロ城の頂上に置かれている大天使ミカエルの像 By Peter Anton von Verschaffelt (Flemish, 1710–1793) – Own picture, Jastrow (2003), パブリック・ドメイン, Link

そんな深刻な状況のさなか、時のローマ教皇グレゴリウス1世は、この城の頂上に立ち、剣を鞘(さや)に収める大天使ミカエルの姿を見たんだとか(大天使ミカエルは通常、剣を振りかざして戦っている姿を描かれることが多い)。

そんな戦いを終えるような大天使ミカエルの様子から、グレゴリウス1世はペスト流行の終焉を予言。その予言通り、ローマで猛威をふるっていたペストはようやくその幕を閉じた。

ローマの休日ロケ地巡り:サンタンジェロ城

城の後ろから見た大天使ミカエルの像

以来この城は「サンタンジェロ城(天使の城)」と呼ばれるように。そして城の頂上には、グレゴリウス1世が見たとされる「鞘(さや)に剣を収める大天使ミカエル」をイメージした像が設置されている。

豆知識2:サンタンジェロ城の前にかかる橋の銅像も実はすごい

ローマの休日ロケ地巡り:サンタンジェロ城

サンタンジェロ橋には10体の天使像がある

サンタンジェロ城に正面に架かっている橋は、長さ135mの「サンタンジェロ橋」。この橋ももともとは別の名前がついていたのだけれども、サンタンジェロ城の命名と同時期に改名された。この橋で注目してほしいのは、橋の両側に掲げられてる計10体の天使の銅像。

それぞれの天使は「キリストの受難(精神的・肉体的苦痛)に関する道具」を手にしているのだけれども、この10体のうちの2体は、なんとローマを代表する芸術家ベルニーニ(スペイン広場の「舟の噴水」もデザインした人)が実際に手がけたというもの。

像の1つは棘(とげ)がついた冠を持っている天使で、もう1つは「I.N.R.I」と書かれた紙を手にしている天使。

ローマの休日ロケ地巡り

By No machine-readable author provided. Lalupa assumed (based on copyright claims). – No machine-readable source provided. Own work assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, Link

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By Marie-Lan Nguyen (User:Jastrow) – Own work, CC BY 2.5, Link

ただ少し残念なことに、橋の上に設置されているのはレプリカの銅像。実際にベルニーニが彫った銅像は、地下鉄A線バルベリーニ駅の近くにある「Sant’Andrea delle Fratte – Basilica」という教会に保管されている。

けれども「まさかここにもベルニーニが関わっているなんて」という、ちょっとした発見を楽しめるホットスポットである。加えて、それぞれの天使がどんな「受難」の道具を持っているのかに注目しながら歩いてみるのも楽しい。

豆知識3:夏季限定の夜間開城や秘密の回廊ツアーにも注目

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バチカン市国へとつながる秘密の回廊 By Chris 73Own work, CC BY-SA 3.0, Link

サンタンジェロ城は、毎年7月〜9月始めにかけて、夜8時〜11時までの夜間開城を行っている。そのシーズンになると、城の頂上から眺めることができる「ロマンチックなローマの夜景」を求めて多くの観光客で賑わう。

そして実はこのサンタンジェロ城、普段は非公開となっている「バチカン市国に繋がる秘密の回廊(Passetto di Borgo)」があることでも有名。1277年に造られた長さ約800mの回廊は、主にローマ教皇が危険にさらされた際の逃げ道として利用されていた。

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バチカン市国に続く通路 By Original photo by Raja Patnaik, post-processed and uploaded by Alessio Damato (with permission of the author) – Own work, CC BY-SA 3.0, Link

この秘密の回廊もサマーシーズンの夜間開城と合わせて一般公開されるので、興味があれば夏にサンタンジェロ城を訪れるのもおすすめ。秘密の回廊は、見学ツアーを申し込むことによって実際に歩いてみることができる。

【ロケ地11:テヴェレ川】ふたりが思いを通わせた瞬間

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震えるアン王女を必死に温めるようとするジョー

テヴェレ川に飛び込み、私服警官たちを巻くことに成功したジョーとアン王女。無事に岸辺に辿り着いたふたりは、「さっきは大活躍だったね」「あなこそ」と、先の大乱闘での互いの健闘を冗談交じりに称え合う。

ふざけながらも、冷たい川の水に体温を奪われたアン王女の体は終始震えっぱなし。そんな様子を見て何とか温めようとアン王女を抱き寄せたジョーは、そのまま衝動的に口づけをしてしまう。

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テヴェレ川のほとりで、初めてキスを交わしたふたり

それを抵抗することなく、受け入れるアン王女。そしてアン王女に惹かれている自分の気持ちの変化にとまどうジョー。初めてキスを交わしたふたりはその後、「とりあえず濡れた服と体を乾かそう」と、照れくさい雰囲気を払拭するかのようにジョーの家に向かって歩き始めた。

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帰らなければ、と宮殿へ戻ることを告げるアン王女

ジョーの家に戻り、服も乾かしたふたり。夜は更け、とうとう迫ってきた別れの時。そう、アン王女は身分を偽って束の間の休日を楽しみながらも自分が王位継承者であることを自覚しており、「1日だけ」という約束通り、夜には宮殿に戻ると決めていた。

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ジョーの車から降りる直前、最後のお願いをするアン王女

アン王女を乗せ、アン王女が指示する場所へと車を走らせるジョー。ついに目的地に到着。しばらくの沈黙の後「どう別れていいか分からない」と口を開いたアン王女。そして「私が降りたらすぐにここを去って。私も絶対振り向かないから」とジョーにお願いした。

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別れを名残り惜しむふたり

苦い表情を浮かべながらも、ジョーはアン王女のお願いに素直に頷く。そして最後のキスを交わしたふたりは、暗闇の先へと続くそれぞれの「元の世界」へと戻っていった。

テヴェレ川:ローマに流れる、イタリアで3番目に長い川

ローマの休日ロケ地巡り

ローマに流れるテヴェレ川

劇中でアン王女とジョーが飛び込んだテヴェレ川は、ローマ観光中に必ず一度は目にするはずの川。ちなみに、イタリア国内に流れる川の中で3番目に長い川でもある。

サンタンジェロ城と同様に毎年7月〜9月の間は特別期間で、多くの露店が川沿いの道に立ち並ぶ。生バンド演奏もあちこちで開催され、夏の間じゅう、連日賑やかな夜が繰り広げられる。

ローマの休日ロケ地巡り:テヴェレ川

サンセットと同時に活気が出てくるテヴェレ川沿い(夏)

夏のローマの夕暮れは8時過ぎ頃で、日が暮れ始める頃からテヴェレ川沿いの道も活気づいてくる。川沿いに立つ店のほとんどが飲食店となっており、「テヴェレ川のお気に入りのお店でアペリティーボ(夕食前に軽い食事をする)」というのが、夏のローマでの人気の過ごし方の一つでもある。

【ロケ地12:コロンナ宮殿】アン王女の最後の記者会見

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記者団の中に立つジョーとアーヴング

アン王女が無事に戻ったことを確認した王室は、「アン王女、病気から回復」と速報を打ち、キャンセルした王室の会見を1日遅れで開催した。会見を取材すべく数多く集まったメディアの中にはもちろん、勤務先の新聞社から派遣されたジョーとアーヴィングの姿も。記者団の中に立つふたりの姿を見つけたアン王女は一瞬とまどいを見せ、少し複雑な表情で会見を始めた。

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ローマでの出来事を一生忘れないと話すアン王女

会見中、「これまでに訪問した中で一番良かった都市は?」という質問を受けたアン王女。「どの都市もそれぞれに良いところがあり……」と、すべての都市に対して平等なコメントで返答をしようと試みるも、少し思いとどまり、「ローマです。何が何でも、ローマが一番です」と胸を張って言い切った。

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アン王女をかばうため、特ダネはないとシラを切るジョー

ジョーはジョーで、この会見に臨む前、新聞社の上司とひと揉めしていた。ジョーが約束していた「大スクープ」を期待していた上司は、会社に出社するなり「早くネタを見せてくれ」とジョーにせがむ。

ところがアン王女に対して特別な思いを抱いてしまったジョーは「記事は何もありません」とシラを切り通した。そう、ジョーはアン王女のスクープは世に出さないと決心していた。

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盗撮していた写真を渡すアーヴィング

記者会見を終えたアン王女は、各メディアの記者一人一人と挨拶を交わしていく。自分の番が訪れたアーヴィングは、「ローマ訪問の記念として写真をプレゼントさせてください」と、盗撮していた「王女のローマの休日」の写真が入った封筒を手渡した。

封筒を開け、パーティー会場でギターを振りかざして応戦する自分の姿を目にしたアン王女は、少し驚きながらも、嬉しそうにその写真を受け取った。

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この時初めて会ったかのように振る舞うふたり

そしてアン王女はついにジョーの元へ。この時初めて会ったかのように、「お会いできて光栄です」と挨拶するジョーに対して、「私こそ」と答えるアン王女。手を握ったまま数秒間、瞳で無言の会話を交わすふたり。この瞬間が本当の本当に、ふたりにとって最後のひと時となった。

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一人無言で、アン王女の会見場所を去るジョー

アン王女の会見が全て終わり記者団が解散していく中、ジョーだけはなかなかその場を離れることができない。会見場に一人立ちすくみ、しばらく沈黙を続ける。少しして、納得するしかないと自分に言い聞かせるような表情で、ようやくその重い足を踏み出す。

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そして誰もいなくなった会見場

出口付近に近づいたジョー。名残惜しそうに再度立ち止まり、アン王女が座っていた場所をもう一度だけ振り返って見る。誰もいない、しんと静まりかえったステージを目にしたジョーは、現実を受け止めるかのように前を向き直し、静かにその場を後にした。

コロンナ宮殿:世界を代表する壮麗な貴族の館のひとつ

ローマの休日ロケ地巡り

コロンナ宮殿内の庭(中央の柱は一族の紋章でもある) By LalupaOwn work, CC BY-SA 3.0, Link

宮殿の名前にもなっている「コロンナ家」の名前が史料に登場するのは、9世紀。そして西暦1200年頃から現在に至る約800年以上にもわたって、ローマにあるクィリナーレ丘の斜面に住み続けている。広大な敷地の上に立つ宮殿は一族が住む複数の母屋から成り立っており、それらの建築や増改築は5世紀にも及んだ。

数世紀にも渡った工事の影響から、宮殿内の建物には各時代の様々な建築スタイルが入り混じっている。建物を通して多くの時代を反映したデザインを見る事ができるというのも珍しく、コロンナ宮殿の特徴の一つと言われている。

また数多くの貴重な芸術品も収蔵しているコロンナ宮殿は、かの偉大なヴェルサイユ宮殿のサロンに勝るとも劣らないとも評価されている。

豆知識1:多くの権力者を輩出したコロンナ家

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一族初のローマ教皇・マルティヌス5世 By After Pisanellohttp://www.galleriacolonna.it/html_eng/collezione.html, Public Domain, Link

コロンナ家はローマの歴史にも大きく関わっており、12〜13世紀にかけて多くの枢機卿(すうききょう: ローマ・カトリック教会において、教皇に次ぐ聖職位)や元老院議員(王政ローマ時代における、王への助言機関の議員)が数多く誕生。15世紀には、一族初となるローマ教皇マルティヌス5世が誕生した。

豆知識2:毎週土曜日のみ、コロンナ美術館が一般公開されている

先述したように、コロンナ宮殿には現在も一族が住み続けているため、見学の時間や見学可能スペースも限られている。毎週土曜日の9時〜13時15分(最終入場)の間が見学時間となっており、その間は劇中でも登場した「コロンナ美術館」を主に見学することができる。

『ローマの休日』ロケ地巡りMAPと巡り方

さて、これまで紹介してきた映画『ローマの休日』の1〜12までのロケ地は上記MAPにまとめているので、ロケ地巡りのプランを立てる際の参考までに。「コロッセオ」や「フォロ・ロマーノ」の内部を見学せずに外から眺めるだけにするならば、全てのスポットを1日で巡ることも可能(12番のコロンナ美術館を除く)。

1日で巡る場合、南→北 又は 北→南で巡ると効率的

ロケ地巡りの順路としては、南側「真実の口(地図上9番)」〜北側「マルグッタ通り(地図上2番)」に向かうか、その逆、北側「マルグッタ通り(地図上2番)〜南側「真実の口(地図上9番)」に向かって巡ると効率良く回ることができる(12番のコロンナ美術館は除く)。

「真実の口」、「サンタンジェロ城」はバスやタクシーで向かうと便利

ちなみに「真実の口(地図上9番)」、「サンタンジェロ城(地図上10番)」、「サンタンジェロ橋/テヴェレ川(地図上11番)」は他のロケ地から少し離れているので、これらのスポットに行く際には路線バスやタクシー、ウーバー(Uber)などを利用していくのがおすすめ。とはいえ歩けない距離でもないので、歩くのが好きなら散歩がてら歩いて向かうのももちろんおすすめ。

コロンナ美術館の見学を希望する場合は、別日での検討がベター

コロンナ美術館への入場は土曜日の午前中のみと限られているので、1日でのロケ地巡りプランには盛り込まないのが無難。また見学する場合にも数時間は要するかと思うので、余裕を持って観光したい場合には別日で調整するのがおすすめ。

色褪せない『ローマの休日』を感じる、永遠の都ローマ

ボルゲーゼ広場から見えるスペイン広場

ボルゲーゼ広場から見えるスペイン広場

ローマが醸し出す雰囲気は、とにもかくにもため息もの。何千年、何百年にも渡って色褪せることなくそこにあり続ける無数の建物と、その背景に眠る幾千ものストーリーの数々には、胸を熱くせずにはいられない。アン王女が「ローマは特別だ」と公言したように、ぜひ、自身だけの「特別なローマ」を見つけ、「永遠のローマ」を感じてきてくださいね。

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