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映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』で人生学/「好き」は人を魅了する。光を選び続ける人生を!

映画『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』で人生学

「好き」は人を魅了する

なぜマダム・フローレンスは今尚世界中の人々に愛されるのか。その答えは、彼女が音楽へ向けるピュアで真っ直ぐな「好き」という姿勢なのではないだろうか。音楽が世界をより良くすると信じ、音楽の普及に人生を捧げる彼女の姿勢は、救いようのない音痴であるにも関わらずとてもチャーミングで憎みようがない。

そんな邪念のないピュアな「好き」の姿勢は、人の心を温もりで包む。フローレンスのファンの多くが、彼女の歌声よりもその精神に惹かれているのではないだろうか。音楽を愛し、心から楽しむフローレンス。願わくば、自分もこんな風に何かに夢中になってみたい。でも何が好きか分からない。だから好きを見つけて頑張っている人を応援し、その人と同じ夢を見たくなる。

フローレンスが音楽に抱いていたような強い「好き」の想いに、人々は魅了され、温かく優しい気持ちの連鎖を生む。今尚多くの人々が彼女のコンサートに魅了されていることが、それを証明していると言えるのではないだろうか。

※以下、内容にネタバレを含みます

光を選び続ける人生を!

(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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世界的音楽の殿堂であるニューヨークのカーネギーホールで、今尚アーカイブ人気No.1と言われている「フローレンス・フォスター・ジェンキンス」の公演の背後にあるストーリーを紹介しているのがこの「マダム。フローレンス! 夢見るふたり」。

フローレンスは父親から莫大な遺産を相続し何不自由ない生活を送っているように見えるが、彼女はいくつも不幸になる要素を抱えて生きてきた。死と隣り合わせの梅毒(当時は不治の病)を患ったことで、大好きだったピアノは弾けなくなり、愛する人と触れ合うことも、子どもを授かることもできなかった。

病気のせいで髪の毛をなくし、頭には常にカツラを被っている。体力もなくなり、1時間程度のコンサートをしただけでも疲れ切ってしまう。

それでも、彼女は光を選び続けた。自分が好きなこと、自分にできることを追求し、そこに全力を捧げる。彼女にとってのそれが音楽だ。音楽の道を追求し続けるという「光」を選んだことで、フローレンスは生涯幸せでいられたのではないだろうか。

「世間がどんなに笑っても、私がカーネギーで歌った事実は消せないわ」

(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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これは映画の終盤、実は自分が音痴で人々に笑われていたという悲しい事実を知ったフローレンスが冗談混じりで放った印象的なひと言だ。

このひと言は、彼女が「光」を選び続けた女性であることが象徴されていると言えると思う。ショッキングな出来事の中でも必ずポジティブな側面を見い出し、起こった事実を肯定的に捉える。「光」を選び続けた彼女は死にぎわまでも輝いていて、とても魅力的な女性だった。

補足1:メリル・ストリープとヒュー・グラントの共演なんて幸せすぎ!

(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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まずこの映画の予告編を見たとき、このふたりの共演を見逃す理由なんてない!と一瞬で思った。アカデミー賞史上最多ノミネート数を持つ実力派のメリル・ストリープと、ロメンチックラブコメディ界の帝王(勝手にそう思っている)ヒュー・グラントだ。

映画のストーリー関係なしに、ふたりの演技を見ているだけでも十分に価値があるとさえ思う私のような人って、多いんじゃなかろうか…。そして今回の映画「マダム・フローレンス 夢見るふたり」でも、もちろんこのふたりの演技は最高だった!

ピュアで瞳がキラキラ輝く少女のような可愛いメリル・ストリープ

相変わらず、メリル・ストリープの演技大好き!素敵な女性だ。今回のフローレンスも、まるで4〜5歳の少女のように演じている。特に映画冒頭のソプラノ女性のコンサートで、その美声に聴き入っている姿なんて超絶かわいい。目をパチパチさせて、心で歌声を感じているかのようだ。

そして本来はアメイジングな歌声を持つメリル・ストリープだが、今回の役では音を外すために音痴になるレッスンを受けたとのこと。映画の中では確かに音痴で、時々耳を抑えてしまいたくなるシーンもあるのだけれど、今回のメリル・ストリープも最高に素敵でした。

今回のヒュー・グラントはいつもと違う!?

(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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スクリーンで見た時には正直、ちょっと歳とったな……と面食らったのだけれど、変わらずの紳士っぷり、安定の格好良さはむしろ円熟味が増している。

そして今回の映画で特筆すべきは、いつものドタバタラブコメのりだけではなく、愛の本質を知って献身的に妻に尽くす夫というしんみり&泣かせるヒュー・グラントが観れること。この映画のサブの見どころと言ってしまってもいいと思うほどだ。

外に愛人を作ってちゃっかり楽しんじゃっているのだけれども、その愛人とのデート中、バーで妻の音痴な歌声が録音されたレコードをネタに侮辱を楽しんでいる若者たちに「レコードを返せ!」と立ち向かう姿なんか、ああ、本当にフローレンスのこと愛しているんだなぁとしみじみしてしまう。愛人との時間よりも妻を守ることを本能的に優先している姿に、なぜか勝手に安心してしまうのだ。

そして何と言ってもラスト。みんなに笑われていたのねと落ち込むフローレンスに対して「僕は君の歌う心に惹かれたんだ」としわくちゃの顔で伝える様子にもジーンとしてしまう。

とにかくこの映画では新たな魅力満載のヒュー・グラントなのだ。ブラボー!ヒュー・グラント!

でもフローレンスの死後、愛人と即結婚…?

映画の中では愛人キャサリンと別れたシンクレア。でも史実上では、フローレンスの死後ふたりは結婚していたとのこと。やっぱりシンクレアはただの遺産狙いだったのかー!?とちょっとモヤモヤする事実に困惑してしまう…。実際のシンクレアも、この映画のシンクレアのようにフローレンスを心から愛していたと信じたい…。

補足2:嫌でも目を引く衣装にも注目!

(C)2016 Pathe Productions Limited. All Rights Reserved

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この映画「マダム・フローレンス 夢見るふたり」、主人公フローレンスの衣装がとにかく豪華で、嫌でも注目してしまう。彼女の衣装を見ることでも、この映画を楽しむことができると思う。

特に冒頭で天使の姿になったりジャンヌ・ダルク風の女性を演じるフローレンスはたまらなくチャーミングだ。そしてそれに感動して涙を流す観客の様子など、突っ込みどころも満載。

極め付けは何と言っても最後にカーネギーでコンサートを開催したときの衣装。金具をシャリシャリ揺らしてダンスを披露するフローレンスなんか、もう愛しさを感じる境地に達している。とにかく、そのゴージャスな衣装に私はとても至福感を得たのでございます。

補足3:カーネギーでのコンサートシーン、撮影裏話

メリル・ストリープのインタビューを見て知ったのだけれども、映画終盤にカーネギーホールで歌うシーンでは、エキストラに何を撮影するのか伝えずに撮影を行ったそうだ。なので観客がフローレンスを見て笑っている姿は全て演技ではなく「リアル」なものだそう。

私の記憶では、観客は確かに爆笑していた。そうか、あれはリアルな爆笑だったのか…と思うと、あんなに人を馬鹿にして笑えるものなのか…と少し複雑な気持ちと、「リアル」が持つ雰囲気の強さに感心するふたつ気持ちを同時に抱いた。

世紀を超えて人々を魅了し続ける歌姫がまさに「ブラボー!」な映画

自分の「好き」に対して純粋に、真っ直ぐに突き進んだ女性、マダム・フローレンス。不幸な側面を抱えつつも常に「光」を選び続け、周囲の人の心までも温もりで包んだ彼女はまさに「ブラボー!」。

人生を捧げて追求し続けることができるほどの「好き」な何かを持つことは、本当に幸せなことだ。

【予告映像とあらすじ】

フローレンスの絶対不可能な夢はやがて人々の希望に-。

ニューヨークの社交界のトップ、マダム・フローレンスの尽きない愛と財産は、夫のシンクレアと音楽に捧げられていた。ソプラノ歌手になる夢を追い続けるフローレンスだが、自分の歌唱力に致命的な欠陥があることに気づいていない。

愛する妻に夢を見続けさせるため、シンクレアはおひとよしなピアニストのコズメという伴奏者を見つけ、マスコミを買収し、信奉者だけを集めた小さなリサイタルを開催するなど献身的に立ち回っていた。

しかしある日、フローレンスは世界的権威あるカーネギーホールで歌うと言い出して―。持病を抱えながらも音楽に生きる彼女の命がけの挑戦に、シンクレアも一緒に夢をみることを決める。さあ、笑いと涙で包まれた奇跡の公演の幕があがる!

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